Webサイトのリニューアルに役立つ「顧客アンケート」のすすめ
Webサイトのリニューアルや改修にあたり、現状の課題を把握することは非常に重要です。課題を把握するための代表的な手法としてはアクセス解析が挙げられますが、導き出す仮説の根拠が基本的にアクセスデータのみとなるため限界はあります。そこでアクセス解析とセットで実施したいのが、実際の顧客の声である「顧客アンケート」です。
自社の施策として実施し、顧客アンケートがWebサイトのリニューアルに非常に役立つと実感しましたので、本記事にてご紹介いたします。
■目次
・本記事で紹介する顧客アンケートについて
・顧客アンケートで得られる効果
・顧客アンケートの運用
・顧客アンケートの運用ポイント
・まとめ
本記事で紹介する顧客アンケートについて
一般的な顧客アンケートは、サービス内容に対する顧客の満足度を把握し、改善点を発見するものというイメージがあるかと思います。今回ご紹介する顧客アンケートは、Webサイトのリニューアルを見越した顧客アンケートです。比較した内容を以下にまとめました。
設問例/目的 | 本記事で紹介する顧客アンケート | 一般的な顧客アンケート |
設問例 |
|
|
目的 |
Webサイトへのアクセスから比較検討、問い合わせまでの顧客の思考や行動を把握し、Webサイトの課題や改善点を見つける |
サービスを享受する中での顧客の思考や行動を把握し、サービスの課題や改善点を見つける |
Webサイトの課題や改善点を見つけることに特化した顧客アンケートです。
顧客アンケートで得られる効果
大きく3つ挙げられます。
Webサイトの課題の把握
先述のとおり、顧客アンケートは「Webにおけるユーザーの行動・思考」を具体的に把握するためのものです。アクセスから問い合わせまで、想定していた内容と照らし合わせて、異なる点がずばり現在のWebサイトの課題になります。この課題を解決することこそが、Webサイトのリニューアルの目的になります。
ターゲットとなるユーザー像の具体化
顧客アンケートから得られた行動・思考は自社や制作会社の仮説ではない、Webサイトから問い合わせをした顧客=Webサイトの成功例から得られる極めて信ぴょう性の高い情報です。「このようなことを考えて、このような行動を取る」という具体的なユーザー像が自社・制作会社間での共通認識として、はっきりと浮かび上がります。このユーザー像に対して、効果的に訴求していくためにはなにが必要なのかをWebサイトのリニューアルに際して考えていきます。
リニューアルの必要性の創出
顧客アンケートから得られた現状のWebサイトの課題は、リニューアルを実施する必要性に繋がります。制作会社からの提案ではなく、実際の顧客をベースとした課題であり、なおかつこの課題を解決していくことこそが、顧客を増やしていくことに繋がります。また、制作会社側としても、具体化した課題をクリアするための、より本質的なリニューアルの提案ができます。
顧客アンケートの運用
それでは実際に顧客アンケートをどのように運用していくかご説明していきます。
設問内容の考案
まずは実際に弊社で実施している顧客アンケートの設問例と、その設問によってどのような情報を得て、活用しているのかをまとめましたのでご覧ください。
No. | 設問内容 | 回答例 |
1 | どこで、何をご覧になって、弊社を知っていただきましたか? |
|
2 | 弊社を知っていただいたのは、いつ頃ですか? |
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3 | 制作会社を調べる際に、特に参考にされた内容を教えてください。 |
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4 |
弊社のどのような特徴がお問い合わせの決め手になったと思われますか? |
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5 | 制作会社の選定で難しかった、迷われた部分などあれば教えてください。 |
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No.1|どこで、何をご覧になって、弊社を知っていただきましたか?
この設問は集客施策の効果を検証する目的があります。顧客がどこで、どのように情報収集をしてサイトを訪れているのか。アクセスデータとあわせて解析することで注力するべき集客施策の方向性が策定できます。
・どのような情報が得られるのか:制作会社の探し方、顧客の情報収集場所
・得た情報をどのように活用するのか:集客施策の拡大や見直し
No.2|弊社を知っていただいたのは、いつ頃ですか?
この設問も集客施策の効果を検証する目的があります。顧客がいつから情報収集を始めたのか。集客施策の実施時期の策定に役立ちます。また、情報収集時期がある程度特定できるため、集客施策の実施時期と比較することでデータ上は関連性が見えない間接的な効果も推測できます。
・どのような情報が得られるのか:顧客の検討期間
・得た情報をどのように活用するのか:集客施策の間接的な効果検証、実施時期の策定
No.3|制作会社を調べる際に、特に参考にされた内容を教えてください。
この設問はWebサイトに掲載している情報の効果を検証する目的があります。「制作会社を調べる際」ですので、Webサイトに掲載されていなければ比較検討の土俵にすら上がれない掲載必須の情報です。逆にいえば強みや差別化には繋がりにくいため、この情報に頼っている場合は他の強みや差別化できるものを考案しなければなりません。
・どのような情報が得られるのか:顧客の比較検討材料
・得た情報をどのように活用するのか:自社サイトで必須掲載するべき情報の特定
No.4|弊社のどのような特徴がお問い合わせの決め手になったと思われますか?
この設問もWebサイトに掲載している情報の効果を検証する目的があり、このNo.4こそが自社の強みや他社との差別化に繋がる設問です。この設問の回答は意外と予測と異なることがあり、参考になる情報です。この回答をもとに自社の強みを改めて考え、Webサイト上での訴求力を高めていきます。Webサイトのリニューアルにあたっては特に重要な設問です。
・どのような情報が得られるのか:自社の強み
・得た情報をどのように活用するのか:自社サイトで強調するべき情報の特定
No.5|制作会社の選定で難しかった、迷われた部分などあれば教えてください。
この設問は顧客が業界全般に対して感じている課題感を把握する目的があります。需要がある可能性が高いため、この課題に応えるサービスやコンテンツに昇華しWebサイトに掲載したり、メディアやSNSを通じて発信したりできると、自社の独自性に繋がります。Webにおける独自性の確立という観点では、サイトリニューアルにあたって参考になる設問だと考えます。
・どのような情報が得られるのか:市場の課題
・得た情報をどのように活用するのか:課題解決に繋がるサービス、コンテンツの発掘
以上のように顧客アンケートの設問には必ず「設問から得られる情報」「得た情報の活用方法」があります。顧客アンケートからなにを得たいのかを先に定めた後に、設問を考案していくとスムーズです。以下のようなイメージです。
- アンケートの目的を定める(例:Webサイトでユーザーが重視している内容を知りたい)
- 目的を達成するために必要な回答例を挙げる(例:「料金」「実績の数」など)
- 回答を得るために必要な設問を考案する(例:「Webサイトのどの情報を重視しましたか」)
顧客アンケートの作成
設問内容が確定したら顧客アンケートを作成していきます。顧客アンケートの実施方法としては、Webのアンケートフォーム、アンケート用紙、口頭でのアンケートの3種類が挙げられます。それぞれの特徴をまとめました。
特徴 | Webのアンケートフォーム | アンケート用紙 | 口頭でのアンケート |
顧客の回答場所 |
Web |
店舗、自宅など |
担当者との接触場所 |
回答してもらえる可能性 |
×(低) |
△(中) | ○(高) |
作成・修正コスト |
○(低) |
×(高) | △(中) |
集計コスト | ○(低) | ×(高) | △(中) |
Webのアンケートフォーム
Google FormsやMicrosoft Formsなどのアンケートフォームツールの利用が手軽です。設問の作成や修正はすぐにでき、集計も自動で実施されることが多いためこれらはメリットになります。また、顧客もネットに繋がる環境であればどこでも回答できます。一方で、回答までの行動としては、①アンケートフォームを見つけて、②アンケートフォームにアクセスし、③回答するという3つの段階の行動が必要です。顧客の自発性に依るところが大きいため、3種別で比較すると回答してくれる可能性は低いと考えます。
アンケート用紙
紙に印刷したアンケートを店舗に置き、顧客に回答を書いてもらいます。Webに比べて限られるものの、書ける場所であればどこでも回答できます。一方でアンケート用紙はある程度まとめて印刷することが想定され、一度印刷してしまうと設問内容の修正にもそれなりのコストを要します。また、回答の集計にあたってはアンケートを1件ずつ確認していく必要があります。ただし、顧客が来店した場所に設置する場合は、Webのフォームに比べてアンケートを見つけやすく回答してもらえる可能性としては高いと考えます。
口頭でのアンケート
顧客と接触する担当者が、口頭でアンケートを実施します。直接訊ねることができるため、回答してもらえる可能性が高いです。また、顧客向けにアンケートフォームや用紙を作成する必要がないため、作成や修正コストも低めです。集計に関しても顧客が答えた用紙を1件ずつ確認する必要はないため、比較的コストを抑えられるでしょう。ただし「アンケートを実施することが商談のデメリットになる」と担当者が判断することも大いに考えられるため、回答数は伸び悩む可能性もあります。
顧客アンケートの運用ポイント
最後に、効果的な顧客アンケートを実施するための運用ポイントをご紹介いたします。
易々とは回答が集まらないと認識しておく
顧客にとってアンケートに答えるメリットはないに等しいです。また、数名程度の回答数をデータとしては扱うにはやはり不十分です。これらを認識した上で、顧客アンケートの回答を集めるための工夫が必要です。その工夫をいくつかご紹介します。
顧客アンケートの回答を集めるための工夫
顧客が回答するメリットを用意する
回答の特典です。サービス利用料の割引や無料化、これらが難しい場合は、ギフト券のプレゼントなどが挙げられます。
顧客が回答しやすい設問を用意する
よくある工夫例としては、自由記述ではなく選択形式の回答です。ただ漠然と「記述してください」よりも「この中から該当するものを選んでください」の方が回答する心理的なハードルは低くなります。
加えて弊社の場合は、初回ヒアリング時、提案終了時、制作完了後の大きく3つのフェーズで、異なる顧客アンケートを実施しています。たとえば「弊社のWebサイトの、どの情報が相談の決め手になりましたか?」という初回ヒアリング時の設問を、制作完了後の顧客アンケートで用意したとします。このフェーズでの顧客は、サイト制作時における弊社の対応の印象が強く残っているため、記憶を遡る必要がある初回ヒアリング時の回答には消極的になる恐れがあります。顧客のフェーズに合わせた設問が用意できれば回答率も上がるでしょう。
口頭でアンケートを実施する
先述の通り、やはり口頭でのアンケートは回答率が高くなります。会議や商談終わりに、すぐに終わる程度の設問数であれば顧客の時間も取らせません。弊社の場合はWebのフォームと口頭でのアンケートを併用し、回答率が向上しました。
モデルケースにしたい顧客のアンケート結果を重視する
特にWebサイトのリニューアルを見越した場合は「Webサイトにおけるターゲットユーザーの目標となる動作の数を増やすこと」が目的となります。そのためにはターゲットユーザーの心理や行動の情報が必要です。このターゲットユーザーとなりえる、モデルケースにしたい顧客を事前に定めてアンケート結果を収集できれば、Webサイトのリニューアルにより有益となります。
十分な回答を集めるためには一定の期間が必要
回答率を高める工夫を実施したとしても、やはり集まるアンケート結果の数は限られます。モデルケースにしたい顧客に限定するとなおさらです。アンケートの実施期間は最低でも3ヶ月程度を想定し、Webサイトのリニューアルに備えましょう。
まとめ
顧客アンケートの運用ポイントをふまえると、Webサイトのリニューアルのための顧客アンケートはできるだけ早く実施することをおすすめします。
要件が固まっておらず、リニューアルが半年~1年先でスケジュールに余裕がある場合は、制作会社と相談し、先行して顧客アンケートを実施しても良いでしょう。方向性が定まっていない・リニューアルの士気が低い場合でも「顧客が実際にこう言っているのだから、やりましょう」という説得力が生まれます。もちろん実施にはコストが発生するため、ハードルを感じる方もいらっしゃるでしょう。そのような場合でも、「こんなお客さんがもっと増えると良いのにな」というモデルケースの顧客に「Webサイトのどの情報を見て、弊社に問い合わせをしましたか?」という質問ひとつでも、その回答が複数集まれば有益な情報になると思います。
Webサイトの運用担当者さまはもちろん、Webサイト運用サポートを提供している皆様におかれましても、リニューアルを見越した顧客アンケートの実施をご検討いただけますと幸いです。
クライアントの本質的な魅力や課題を適切に引き出し、それをもとに提案から進行管理、予算管理まで、プロジェクトを動かす役割を担っています。