費用対効果の検証前に精査したいWeb広告の効果の定義
Web広告は費用対効果が全てです。広告の継続と停止、予算の増額と削減などの重要な判断は費用対効果の良し悪し次第と言っても過言ではありません。一方で、この費用対効果の検証が不十分であれば誤った判断に繋がります。特にWeb広告の「効果」の定義は費用対効果を表す指標に大きな影響を及ぼします。
そこで今回はWeb広告の費用対効果の「効果」に該当する「コンバージョン」の定義について改めて考えていきます。
■目次
一般的なWeb広告のコンバージョン
まずはWeb広告の基本的なコンバージョンの定義を改めて確認します。
コンバージョン
コンバージョンに至ったアクセスの流入元がWeb広告である場合です。それ以前のアクセスは別の流入元であっても、コンバージョンが発生した最終的なアクセスがWeb広告経由であればWeb広告のコンバージョンに該当します。
アシストコンバージョン
コンバージョンに至ったアクセスは別の流入元であるものの、それ以前のアクセスがWeb広告経由である場合です。例えばWeb広告でサイトにアクセスして離脱し、自然検索で再度アクセスしてコンバージョンに至ると、Web広告ではアシストコンバージョンが発生したことになります。
以上が基本的なWeb広告のコンバージョンの定義です。コンバージョン設定ができていれば、いずれもGoogle Analytics(GA)やGoogle広告でデータとして記録できるため、Web広告の効果として認識し報告している方は多いと思います。
しかしWeb広告の効果は、これらのデータ上で可視化されたコンバージョンだけに留まりません。データ上では可視化できないWeb広告のコンバージョンも存在します。
可視化できないWeb広告のコンバージョン
データ上では可視化できないもののWeb広告のコンバージョンとして定義できるケースは以下の3つが考えられます。
- デバイスが変わった場合
- Web広告が視覚的に貢献した場合
- 別サイトでコンバージョンが発生した場合
デバイスが変わった場合
Web広告でサイトにアクセスして離脱し、別のデバイスを使って広告以外の経路でサイトに再訪問してコンバージョンに至るケースです。具体的には以下の2つの事例が考えられます。
初回訪問時
スマートフォンを使用してWeb広告でサイトにアクセスして離脱
再訪問時
パソコンを使用してダイレクトでサイトにアクセス、コンバージョンに至る
このような場合、GAでは初回と再訪問時で別ユーザーとして記録されるため、データ上ではWeb広告のコンバージョンとして記録されません。
なお、機械学習を取り入れたGA4では同一ユーザーとして認識され記録される場合もあります。しかし現状ではあまり精度が高くはなくデータとして記録されたケースがないため、本記事では可視化できないコンバージョンとして本記事では定義しています。
Web広告が視覚的に貢献した場合
Web広告に記載された情報を元に、別の流入元でサイトに訪問してコンバージョンに至るケースです。以下のような流れが該当します。
1.以下のエムハンドのリスティング広告が表示される
2.クリックはせずに「エムハンド」という企業名を記憶する
3.「エムハンド」で検索してサイトにアクセス、コンバージョンに至る
この場合、ユーザーは広告をクリックしていないため、リスティング広告からのアクセスデータは記録されません。自然検索のコンバージョンとして記録されます。
別サイトでコンバージョンが発生した場合
Web広告経由でサイトにアクセスして離脱し、別のサイトにアクセスしてコンバージョンに至るケースです。具体的には以下のような流れです。
初回訪問時
リスティング広告でエムハンド東京サイトにアクセス、情報を収集して離脱
再訪問時
「エムハンド」で検索してエムハンドコーポレートサイトにアクセス、コンバージョンに至る
この場合もGAでは別ユーザーとして認識されます。さらにはコーポレートサイトで発生した自然検索のコンバージョンとして記録されます。リンク先である東京サイトに限定した視点では、そもそも注意すら向かない事態になります。
これらのコンバージョンはMAツールで可視化できることもあります。ただし、MAツールの導入には相応のコストが発生します。まずは現在使用しているツールベースで可視化できないコンバージョンの算出を試みましょう。使用している企業が多いGAベースの算出方法を次項で紹介していきます。
可視化できないコンバージョンをGAベースで算出する方法
可視化できないコンバージョンの算出にあたり、以下の条件を満たしていればGAの追加設定は不要です。
- すべての自社のWebサイトをGAで計測している(コンバージョンも含む)
- Web広告を出稿していない期間のデータが蓄積されている
前提1|すべての自社のWebサイトのコンバージョンを含める
先述の通りリンク先ではないサイトで発生しても、Web広告のコンバージョンとして定義できることがあります。ただし、コンバージョンの内容は精査する必要があります。Web広告のリンク先のサイトと関連性のあるコンバージョンを抜粋します。
具体的にエムハンドの実例を紹介します。エムハンドでは以下のようなWebサイトを展開しています。
集客サイト
- エムハンド東京サイト:東京、関東エリア特化の集客サイト
- エムハンド大阪サイト:大阪、関西エリア特化の集客サイト
- エムハンド士業サイト:士業特化の集客サイト
- エムハンド歯科サイト:歯科医院特化の集客サイト
コーポレートサイト
集客サイトはすべてWeb広告を出稿しています。
例えば東京サイトのWeb広告のコンバージョンには、コーポレートサイトで発生した東京や関東エリアのコンバージョンを含めています。士業サイトのWeb広告のコンバージョンには、コーポレートサイトで発生した士業案件のコンバージョンを含めています。
前提2|Web広告以外の流入元のコンバージョンを含める
こちらも先述の通り、別の流入元から発生していてもWeb広告のコンバージョンとして定義できることがあります。ただし、外部サイトやSNSなど、その流入元のアクセス数や信頼性がコンバージョンの発生に大きく影響しているグループは除外するべきです。エムハンドでは自然検索とダイレクトのコンバージョンに限定しています。
Web広告により増加したコンバージョン数を算出する
上記の2点は前提条件です。他のサイト、他の流入元のコンバージョンを含めるという考えの下で、あくまでも可視化するのはWeb広告の効果です。
そのため、Web広告を出稿することで他のサイト、他の流入元のコンバージョン数がどの程度増加したのかを算出する必要があります。具体的にはWeb広告を出稿していない期間と、出稿している期間のコンバージョン数を比較します。
可視化できないWeb広告のコンバージョン数の計算式
3点を踏まえて、以下の計算式で月間コンバージョン数が算出してみましょう。
他のサイトの月間コンバージョン数
(他のサイトのコンバージョン数)-(広告を出稿していない期間における他のサイトの月間平均コンバージョン数)
他の流入元の月間コンバージョン数
(他の流入元のコンバージョン数)-(広告を出稿していない期間における他の流入元の月間平均コンバージョン数)
これらの合算が可視化できないWeb広告のコンバージョン数です。
可視化できないコンバージョンを扱う上での注意点
運用担当者の多くは、Web広告の成果を報告していると思います。当然ながら可視化できないコンバージョンもWeb広告の成果に含めるべきではありますが、その扱いには注意しましょう。3つの注意点を挙げます。
副次的な効果として扱う
紛れもなくWeb広告の効果ではありますが、通常のコンバージョンとは分けて考えるべきです。特に今回ご紹介した算出方法も「Web広告が貢献した可能性」に過ぎません。
通常のコンバージョンと同等の扱いで報告すると、その内容の信頼性はむしろ低下してしまいます。副次的な効果として、通常のコンバージョンとは別枠を設けて報告しましょう。
Web広告の効果の低下も可視化されることがある
前月まではプラスだったコンバージョン数がマイナスに転じた場合は、副次的な効果が顕れていない、つまりWeb広告の効果の低下も可視化されます。この場合は運用担当として責任をもって広告の設定を見直しましょう。
自然検索のコンバージョンは検索順位も加味する
順位が高くなればWeb広告を出稿していなくてもコンバージョン数は増加します。コンバージョンしたユーザーの検索語句はある程度特定しておきましょう。その語句の順位が明らかに高くなっているようであれば、Web広告のコンバージョンからは除外した方が無難です。
おわりに
Web広告の費用対効果に対する判断基準は年々厳格化しています。一昔前は許容されても、今では費用対効果が合わないという判断になり、広告費用の減額や出稿の停止に至るケースが増えていると思います。
このような状況だからこそWeb広告の効果はより深く認識されなければなりません。一見した効果だけで厳格な判断を下せば企業の成長を止めてしまう恐れもあります。今一度、Web広告の効果を見直してみてはいかがでしょうか。
広告戦略を元に、クライアントの課題解決に向けたプロモーション活動を提案・実行します。