2016.02.04

  • 医院経営

歯医者さんは気まずい?患者さんからの「担当を変えてほしい」希望【歯科あるある第8回】

最近では歯周病治療に力を入れている歯科医院も多く、歯科医師だけでなく歯科衛生士も担当制で、一人の患者に一人の歯科衛生士というシステムを導入している歯科医院が増えてきました。

そんな中で、患者さま側からの「担当を変えてほしい」という担当変更の要望なんてこともよくあるのではないでしょうか?

新米ドクターや新米歯科衛生士から、院長やベテラン歯科衛生士への変更であれば特に問題なく進められると思いますが、それが逆だとなんとも気まずいものがあります。

そんな担当変更のトラブルについてのお話です。

患者さんからの担当歯科衛生士を変えてほしい、という変更希望。直接伝えられる?

20代のころはずっと患者担当制の歯科医院で働いていました。

歯周病治療やインプラントに力を入れている医院で、歯周病の治療はもちろん、オペのアシスタントや、定期健診のクリーニングもすべて担当医師、担当歯科衛生士が行うシステムでした。

ですが、シフト制での勤務だったため、たまに受付のミスで、担当歯科衛生士が休みの日に患者さまのアポイントが入ってしまうということがあり、その場合は空いている歯科衛生士が代わりにその日の診療を行うということがありました。

Sさんの事例

そんなある日、先輩歯科衛生士の担当患者さまが間違えて私のアポイントで入っていました。

先輩の担当患者を引き受けるのは気が重くて嫌だったのですが、仕方なくその日の定期検診のクリーニングを担当することになりました。

患者さまは40代の主婦Sさん。優しそうで、感じのいい人だったので安心しました。

クリーニングも「全然痛くなかった! 衛生士さん上手なのね~」なんて言われて、私の方も気持ち良く診療をすることができました。

クリーニングも終わり「では、また3カ月後に定期健診の予約を~」なんて話をしていると、Sさんから「次回もあなたにクリーニングをお願いしたいんだけど…」と。

患者さまの方から直接指名してもらえるなんてあまりないことなので、とてもうれしい半面、担当を変えてほしいという要望に「先輩になんて伝えたらいいんだろう…」という考えが瞬時に浮かびました。

その日は先輩のお休みの日だったということもあり、受付のスタッフにそれとなく話を伝え、次回の検診予約も先輩の定休日に、私のアポイントに入れてもらい、Sさんの担当変更は先輩に知られないようにという形で行いました。

歯科衛生士だけじゃない?実はドクターも悩んでいた

ですが、今回さりげなく担当変更をしてくれた受付スタッフに聞くと、こういったことは今までにもあったとのこと。

受付で担当変更の希望を伝えてくる患者さんが多いそうで、受付スタッフが本人にわからないように、アポミスを装って担当変更をしたり、いろいろしていたそうです。

特に、歯科衛生士の変更はまだ本人に伝えやすいそうなのですが、院長から勤務医師への担当変更の要望は絶対に院長に伝えられない! と言って困っていました。

その医院では、院長は腕はいいのですが、患者さまにも厳しく、口調がきつい。

勤務医の先生は、院長には及びませんが腕もよく、物腰が柔らかくとっても優しい先生だったので、院長からの担当変更要望も結構あったみたいです。

患者さんだって伝えにくい「担当歯科衛生士を変えてほしい」という変更希望

それから、わたしはSさんの担当になりました。

次の定期検診の時にSさんが言っていたのですが、実はSさん、前の担当歯科衛生士のことが苦手だったとのこと。

指導が厳しくて、できれば担当変更したいとずっと思っていたそうです。

ですが、勝手に担当歯科衛生士が固定されてしまうので、担当歯科衛生士本人がいない状況というのがなかなかなく、ずっと言い出せなかったとのこと。

歯科医院でのアンケートで患者さんの声を聞く

この問題は今、解決しておかないと今後もきっと問題の種になるだろうということで、受付スタッフを中心に改善策を話し合いました。

そこで出た案が「患者さんへのアンケート」です。

今までも、アンケート用紙は受付に置いてありましたが、意見がある人が書くようなスタイルで、実際にあまり書いてくれている人はいませんでした。

それを、内容を変えて、診療の区切りのタイミングを見て受付で渡し、全員に記入してもらうようにしました。

  1. 初診後、主訴の治療が終わったとき
  2. 初回の虫歯の治療がすべて終わったとき
  3. 初回のクリーニングが終わったとき
  4. 初回SRPが終わったとき
  5. 定期検診時

患者さんに渡すのはこの5つのタイミングで、受付スタッフが状況をみはからって患者さまに簡易的なアンケート用紙渡して書き込んでもらうことにしました。

  1. 今回の治療には満足していますか?
    【大変満足・満足・やや不満・不満・わからない】
  2. 担当医、担当衛生士のご希望についてお伺いします。
    【変更希望・他の人でも構わない・今回と同じ人を希望】
  3. ご希望、ご意見がございましたらご自由にご記入ください。
    【自由記入】

回数が多いため、内容は上記のようにごく簡単なものにとどめ、回答内容に問題がある場合のみ、治療に関係しなかったスタッフが詳しく内容をお伺いするような形にしました。

スタッフで案をまとめ、院長に提出すると、院長はこれなら簡単で患者さんの負担にもならないだろうからOKということで、すぐに採用になりました。

アンケートでは担当の変更要望が伝えにくい?

今回の変更の目的は、患者さんからの担当変更希望を円滑に行うことでした。

ですが、患者さんも匿名式のアンケートではないため「変更希望」はなかなか希望しづらい様子で、そういった方は大抵「他の人でも構わない」を選択しているようでした。

次回予約時に担当変更の要望を確認

そこで、受付で次回予約を取る際に「担当医(担当歯科衛生士)を前回担当の○○と、他の者、どちらでもご予約可能ですが、どのようになさいますか?」といった感じで伺い、患者さんからも担当変更を選択しやすいようにしました。

もちろん、患者さんを見極めて、本当にただ誰でもいいという感じの人であれば、今後も同じ担当で管理をしていった方がこちらも都合がいいので、変更はなしで対応します。

患者さんの満足度も向上!

このようなアンケートを行うことで、患者さんが自分の希望で医師、歯科衛生士を選択しやすくなりました。

やはり、希望通りの担当医、歯科衛生士で診療を行った方が満足度も向上しているようです。

希望通りの医師、歯科衛生士で治療をしている人のアンケート結果はほぼ100%「大変満足」を選択していただけています。

また、担当変更されてしまった人は、自分自身で何が原因だったかということを考え、新たに成長できるきっかけにもなったと思います。

そして、スタッフ間で直接担当変更の話をしなくても良くなったので、私たちも気まずくなく、担当変更が受け付けられるようになり助かっています。

歯科衛生士 スヌーピー 女性・40歳

趣味はサーフィン。休みは10歳年上の夫と、夫婦で海に行っている。子供はいないため、自由に仕事と趣味を楽しんでいる。

結婚直後に一度専業主婦になったが、数年で自分に家事は向いていないということに気づく。現在は訪問歯科で勤務中。

ほかのあるある記事を読む⇒あるある一覧